集合住宅 02|マーケティングから計画案へ|プロセス事例
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板橋区の事例をもとに一般的なプロセスを紹介します
デザイナーズマンションとの呼び名で市民権を得てきた賃貸集合住宅。今ではディベロッパーや不動産業社の企画による、 一見するとデザイナー不在の集合住宅さえ、そのように広告されている現状です。収益性の求められる建築の代表格である集合住宅。
マーケティングとデザインのコラボレーション・協働プロセスをご覧下さい。
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マーケティング × デザインのプロセス
恊働者を募る
◯このプロジェクトの市場調査は先の高津をともに成功に導いた「賃貸創造研究所」が担当。
◯集合住宅建設における市場調査は概ね共通している。
◯調べる内容はどの企業共通だが、そのソース(情報源)によって、結果が相違するので注意が必要です。
◯とにかく周辺にかかわる賃貸事業の全貌を浮かび上がらせたいところ。
街を知ること
◯一方、賃貸物件データとは別に、その街のイメージというものが確かに在って、それをつかみ出す必要があります。
すでに完成された生活圏の場合と都市部では暮らすスタイルが全く違う方々を呼び寄せます。
◯先の例のもあるように、共稼ぎにとっては、暮しやすさとしっての一般指標よりも、駅近を望んでいるディンクス層が多く
コンビニの数さえ豊富にあればよい、という生の声は看過できません。
オーナーはその街を知りすぎていて客観化しづらい。
その街の不動産企業へのインタビューも含め、この街その街の、何を求めて住まうことを決定するのか、それは賃料の問題だけなのか
事業に際しては「WHY?」をくり返す行為が必要です。
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計画地の周辺分析|市場を読む難しさ
広域から周辺地域、そして計画地へとスケールを変えてみる
ここに示してあるのは、いわば同業他社の賃貸物件の事実。
数が多いタイプが、その特性を示すが、見方によっては「敵が多い」という読み方にもなる。
この数字やマトリックスから得られた結果をどのように「判断するか」がポイントになる。
魅力的な建築もその「判断」から生まれる「仮説」のうえに描かれる。
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さらに分解して掘り下げる
ここでは一般的にワンルームや1K、あるいは1LDKという呼称のものも、内実は大きいものも小さいものもあって、しっかり数字でつかまえるためのリサーチ。
但しここにも短絡思考は御法度で、例えば「小さなワンルーム」二戸分の大きさの「大きなワンルーム」にニーズが見込めるとしても、倍の家賃はとり得ない。 地域性を重ねてリスクテイクし仮説を立てることが必要です。
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可能性は全て形にしてみる
上記のリサーチから読める一般事項を必要条件としつつ、なおリサーチからこぼれる(あるいは逆さ読みできる)事項もひろいあげ、 部屋の大きさ=空間のユニットのあらゆるパターンを抽出し、全体構成に活かします。早い時期から「建築構造」のアイデアを同時進行で 考えることが必要。集合住宅は、低層でない限り構造上の安全性担保から、かなりゴツい柱・壁が生じるため 後ではプラン不能となってしまうからです。
安易な基本設計は後々災いが起こることを肝に命じたいところ。
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事業の成立性を客観化する
全ての計画に対して事業性を検討する。この事業収支に関しては、デザイナー賃貸で有名な「タカギプランニングオフィス」の協力を得て 少し厳しめに評価検討いただきました。これまでその地域にあまり存在しなかったが、あらたな集客が見込めそうな「シェアハウス」や「アトリエ付住居」も念頭にしたいところ。
「サービス付高齢者向け住宅」そして「SOHO型住宅」なども、付加価値住宅として、別のフェーズの検討と、関連企業との事前ネゴしエーションが 必要となります。