多くの情報が画像も含め手軽に入手できる現在において、自分の暮らしに根ざした「住まいのかたち」をつかみ出す。この作業は、実はそう簡単ではないのかもしれません。
　散在する住まいのイメージやアイディアは、他人のライフスタイルに基づいてデザインされたものであることを、すでに生活者の皆さんは気がついていて、もっと自由でありたいそう感じていらっしゃるのではないでしょうか。しかしながら、様々な事例や情報が、自分で考えることに雑音を奏でる。
　リラックスして考えれば、 本来、皆さんの内側に潜在している、未だ「かたち」になっていないが（いずれ浮かび上がる形は）何ものにも似ていなくてもよいのです。こう記したら、さらに手の届かない難しいものになってしまうでしょうか。その純粋なイメージの手がかりをいかに得るかをお手伝いするのが、私たちの仕事なのです。
　批判を恐れずに記せば、住まいづくりにおけるわたしたち建築家の役割とは、この「あぶり出し作業」を担うこと。すなわち皆さんの生活から生まれる住宅です。外にあるイメージに自分たちの暮らしをあてはめるのでは、できあいの住宅を買うのと同じです。自分の外側にアイディアやイメージを求めるのは後にして、まずは、ありのままに自信を持って、これまでの自らの暮らし方を見つめ「ことば」として紡ぎだしましょう。