高齢者同居・2世帯・大きな家01|開放的な中庭の家
駐車場側の姿|多くの視線に曝される面。囲い過ぎずプライバシーを保つ。
建物と囲いを一体的に設計すると、土地への据わりがよくなる
水はけが悪い町というものはあるもの。住まい手はそのとき敷地を高く盛り上げたい衝動にかられる。すると街路と住まいは馴染みが薄れ、おおきな閾(しきい)が生じてしまう。こんもりと盛り上げ、水はけよい仕上げとし、天然石の階段2段で増水時の仕切りをつくる。あえて屋根の軒裏を見上げながらアプローチ。そして、さりげない植栽と灯りで客人を迎えるかまえ。
視線を遮るためにブリッジを活用した家であるが、そのブリッジの先端には物干場を置き、リビングから干し物を遠ざけた。一方2洗濯物を階へすぐ取込めるように、1階と螺旋で中庭に降りれる立体回遊。物干という毎日の労働が少し楽しい気分になる。
回遊ブリッジ
集いたくなる階段はじまり
アイストップを明るくすると快適性が増す
タイヤのついた個性的なテーブル軽快なソファ(カッシーナ)踊り場から先は見せずドラマチックに格子やすりガラスで透け方の調子を変えるトップライトから距離をとってポリカ版で光を拡散跳ね出して支える
跳ね出して受ける手法は、組積造では見られず、近代以降、キャンティレバーとして鉄、コンクリート工法でにぎやかだ。実は、日本の木造において跳ね出しは古来1000年以上前から、さまさまな可能性を成した技術。5メートルにも及ぶ古建築の雄大な軒先は、尾垂木とよばれる跳ね出し梁を基点に巧みな材の組合わせで成される。現代建築から失われ始めている伝統架構の合理性を、少しでも継承し現代空間に活かしたい。
敷居を床まで下げてみよう
注意深く見ると、敷居を下げた効果が理解いただけるだろうか。まず全開した部分の「敷居」が消えている。また扉の分厚い「框・かまち」が小さく見える。庭との連続感をつきつめると、建具が消えるだけではだめで、上下に敷居の溝だらけなのは、痛々しい。敷居はできるだけ下げる、これがよい。
古材を粋に遊ぶ
古材は使い方で野暮にもなる。こうすれば粋ということは定義できないが、使い方の注意事項を少々。「梁」ならば安全性に考慮して荷重は架けすぎない。対比を促す関係性づくりが基本であり、新材と古材を組み絡めるとよい。色彩の対比も効果的。空間の中心を担わせるなら、この例のように囲炉裏などと組み合わせるのもよい。
寝室こそ光環境を柔らかに
間接照明は光源が直接見えないため目映くないし穏やかな印象になる。隠しやすい電球形状として蛍光灯を用いるが、色温度の低い(低いとは炎の色に近いということ、高いとは白っぽいことを示す)ものがよいだろう。蛍光灯には「電球色」3000K(ケルビン)「昼白色」5000K、「昼光色」6500Kなどの種類があるが、寝室には電球色が穏やかに映る。
ふたつのお風呂
子供世代は明るい色彩の一体型バス。親世帯は空と持窓の渋いお風呂に
敷地全体にたくさんの庭をちりばめて
立体的な回遊動線が便利