好きなコト、心地いいもの、楽しいコトに素直に創る、私たちはそれを感性価値住宅とよんでいます。
感性性価値住宅02|音楽好きファミリー・街角のサウンドボックス
■街角の音楽室、南に向かって上昇する屋根、空を借景する大きな開口部が印象的な外観
■敷地・環境などの条件|施主の要望|問題解決
この住まいづくりは敷地をクライアントとともに探し求めるところから始まりました。 新興住宅地に風景、眺望に優れた場所は希薄です。しかし、この敷地は大きな運動公園に面した角地。 ここに決めました。ところが、克服する条件が大きく二つ。眺望は「北側」に展開するということ、 これをいかに借景として取り込むか。もう一つは南面に2軒の住宅が囲み採光の心配があります。
とにかく「明るい」こと。そして、冬の暖かさを望まれました。冬場の温熱環境づくりには、 長谷川オフィスオリジナル「どまだんシステム」の採用を望まれました。明かるさを獲得するには、工夫が必要です。 周囲の建物がこの敷地に落とす影の図を入念に描き分析。「光を知るには影を知る」です。 これによってL字型の配置計画、吹抜けの位置、スキップフロアの空間構成が導き出されます。
■提案のポイント
奥様はこれまで社宅にてピアノ教室をささやかに行われていました。 このピアノ教室、すなわち「音楽」をこの住まいの特徴にしようとコンセプトを膨らませました。 まず実家に眠る「グランドピアノ」を受け入れうる大きな土間空間を、街に開く形で位置付けます。 土足のまま生徒さんは音楽室に至ります。そして、ここからトイレなども利用できるプランです。 もちろん、特別にしつらえるのではなく、動線の処理で生活が脅かされない様工夫します。 大きな引戸を開放することで音楽室は「板の間」「柔らかコルクの間」へと広がります。 こうすることで住まい全体を使って「発表会」やパーティーも企画します。 とかく、音楽室は「遮音」を徹底化した「閉ざした空間」に計画しがちですが、この住まいはお子さんが外から帰宅したらば、 階段を上がりながら吹抜け越しに、母の「音楽を伝える姿」や「演奏」を感じながら個室へと至ります。 「閉ざす」のではなく「開く」在り方から発想を広げます。こうして、住まい全体が音楽室といってもよい、 平面的、立体的構成と、周囲の日照の入念な調査から光り溢れる住まいとなりました。
■物語りを育む|住まいと町の対話
少年はいつもゴミ収集の方々を見守っている。おじさんは帰りしなに必ず手を振ってくれる
■ポーチ廻り
玄関ポーチは門型フレームに縁取られた伸びやかな造形。 メタリックな外観が一転木質感のあふれる世界となっている。 自然素材は自分でペンキを塗れる部分に限定したっぷり使う。
■テラスの庇とフレームの近景
■テラス|夕景
南側を隣家で囲まれた敷地。とはいえそれらの影を計算すれば冬場でも日射しが得られる。 リビングの上の2階をスキップフロアで通常の2階よりも持ち上げて、高い天井と大きな窓で光を享受した。
■北側の姿と庭側の姿
最上部のテラスは一日中お日さまを浴びる物干テラス。洗濯物が見えにくい配慮をしています。
■玄関と土間
大きな音楽室は土足のまま使える土間タイル。玄関から直接アプローチできて、 生活空間を通らずに教室として使用できます。
■音楽室
乳白色の引戸を閉めてプライバシーと温熱環境を向上させる。街が公園が音楽室に飛び込んでくるような近さです。
■玄関から音楽室を見る
街角の引戸を全開し、公園をバックにピアノレッスン。一方、街からはこの住まいの「アクティビティー」が垣間見え、 看板なしでも、音楽教室の存在が街へ滲み出します。
■音楽室から家族スペース
空間は平面的、立体的に広がり大きな引戸の効果で「伸び縮み」します。楽しい音楽発表会が待ち遠しい。
■音楽室を見おろす
グランドピアノの造形は真上から見るとアート作品のよう。音を奏でる芸術品
■柔らかコルクの間から音楽室へのつながり
■コルクを敷き詰めたくつろぎ空間
ごろごろしたり、床に座ったりと、低い姿勢のくつろぎがお好きな方には、コルクがもってこいの素材です
■柔らかコルクの間からテラス
南住居の間隙をぬって吹き抜けから太陽光ををつかまえる。折り紙のように屈折した天井に陰影を際立てる。
■南庭と食の空間を見る
Lの字型の部屋の広がり|タイルの縁側で緩衝的に間をとることで、食の空間に落着きが生まれています
■キッチン、食のスペース
アイランドスタイルのキッチンは動きやすさ重視。 コンロとシンクの分離を思いきれば、キッチンはコンパクトにまとめられます。
階段をのぼり音楽室の傍らを
■音楽的なリズムのある空間
グランドピアノを見おろすこの空間は様々な方位から、さまざまな時間に陽射しが差し込む。 面構成に工夫をしながら素材を切り替えて構成を際立てます。
■階段の吹抜け廻り
2階へ上がる階段はいろんな空間にふれながら。屋上に結ばれています
■脱衣と洗面
洗濯流しをふたつめの洗面ボールとしてもつかえるデザイン処理
■濃紺の柱と床 物干デッキ
外観上もポイントを担う一番高い場所は、夕涼みと物干のスペース