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快適性の評価
私たちが、六面輻射冷暖房にこだわり、それを実現し続けるのはこれから説明する科学的事実と、実際に実現した温熱環境とがしっかり符合するからです。その体感は、 ことさら暖かいと感じない、しかし、どこも冷たくない。しいていえば、温度状態に意識が向かないような状態を実現しています。
快適な室内温度帯と湿度の関係について
下の図の見方を説明しましょう。オレンジ色の範囲が人間の「快適」と感じる範囲です。快適と不快には個人差がありますから、 このように広がりを持ちます。こういう図はまず大づかみに特性を知りましょう。上部に先細りの図ですね。
縦が湿度、横が温度です。湿度が高い程に快適ゾーンが狭まっています。逆に、カラッと湿度が下がる方向には快適ゾーンが広がっている。湿気のアジア圏 に暮らすわたくしたちでさえ、多少慣れているとはいえ、ジメジメベトベトが不快です。人間の共通の生理として湿度が上がると快適ゾーンが狭くなっています。
この湿気と温度による快適ゾーンについて、もう少し詳細に検討しましょう。
室温が17℃を下回ると、いかに湿度が適切でも、快適ゾーンには入らない。つまりは寒いから、ということですが、耐えることはできるでしょうね。 しかし、快適ではないということです。こうして見ると、個人差がある快適・不快も、人間であれば概ね共通しているといえます。
この図に、日本の四季を重ねてみることにしました。但し、これは外気温ですから、住宅内の人工的な温熱環境ではなく 屋外環境での「気温と湿度」です。5月、10月が快適ゾーンに重なります。納得です。日本のデータは少しばかり湿度が高いところに集まっています。 東京ですから湿度は少し高いのが事実です。
こうしてみると、快適ゾーンが四季の実感と重なってイメージできます。馴染みのないこうした図表も、ぐっと近くに感じるでしょう。
◯指標|私たちが目指すべきは20℃強、湿度は35〜60%というところでしょうか。
快適に感じる温度と風(風速)の関係について
下図は風と室内温度の関係を快適性の面から評価するよい図表です。
「図の右側に比べ左側が極端に狭い形」をしていますね。つまり温度が低いほど快適ゾーンが狭いということが大雑把にわかります。 温度が18℃以下では、どのように緩やかな風でも快適ゾーンに重ならない。これは体感的に経験があるでしょう。
例として、真冬の極寒期では、人間の吹きかける「フーッ」という息でさえ寒く、うっとうしく感じます。
もうひとつ例を出しましょう。真冬で部屋が冷えている状態だとして、フロ上がりに少し濡れたままで部屋に入ったとします。 そこで、寒いのでエアコンの暖房を入れました。設定温度30℃。しかし、室温があがっていないので、身にしみるほどエアコンの空気が冷たく感じる。
この体感も、この図表から納得できます。
温度が低くなると風が不快を生み出し、温度が上がれば、風は強くなった方が快適ゾーンが広がっています。とてもわかりやすいですね。
ここから何を学ぶのか。
◯指標|「快適さは「不快」さを無くすことから生まれます。室温が低いと風は不快さをつくる、
従って、冬場は「風」がなければ不快さを緩和できる。理想は、ほどよい温度帯で無風状態の温熱環境が理想
結論から先に記せば、壁と床と天井の温度が整うと、室温も同時にそれに影響を受けて整います。
その温度がすべて、ムラなく一定になると、実は室温は、冬ならばそれほど高くなくても、夏ならばそれほそ冷たくしなくても快適になるのです。 ご存知でしたか。わたしたちは、数多くの住まいでこの温熱経験をしていますので、実感です。
この図からもそれが顕著にわかります。図全体を大きくみると、左上がりですね。 すなわち「壁表面の平均温度が高くなると|室内の温度が低くても」快適なゾーンを得られる、と読みます。
◯指標|室内を取り囲んでいる面の温度にムラがでるような温熱環境はエネルギーの無駄。表面温度を整える手法をとする。
◯まとめ指標|冬|風の生じない暖房がベター。更に、理想的には空間六面の温度が整う面輻射の冷暖房を理想とします。